くさりおちる、






「…ッ…、や、あか…ッや…」


部室にそぐわない声。

出させているのはオレ。

出しているのは、先輩。


相談なんですけど、なんて言えば先輩は優しく微笑んで。

その顔が俺は嫌いだって、知らないでしょ?

誰にでも優しくて、誰も彼もが平等で。

それが酷く、俺の気持ちを潰してるかなんて。


知ってるわけ、ない。


こんな感情、知られないようにしてきた。

最初は話すだけで嬉しかった。

それだけで満足だったのに、気持ちはだんだんと醜くなっていって。

気付けば、先輩を見るだけで欲情してた。


それを押さえる術を、俺は知らなかった。


「や…めッ…」

「やめろ、なんて言わないですよねぇ?こんなにしといて」


先輩のモノに触れ扱くと甘い声が部室に響く。

目を瞑ると生理的に流れた涙。

それを拭うと先輩はゆっくりと目を開ける。

虚ろな目で見上げると、優しく笑った。


「何で…、何でそんな顔するんですか…」

「赤也…?」

「優しくしないでよ…、嫌ってよ…」


自分でもよく分からないことを口走っていると思う。

先輩が好きで、好かれたくて。

けれど今、先輩を裏切っているのは紛れもなく俺自身。

好きだから触れたい、なんて子供の我儘と何ら変わらない。


「先輩……」


自然と溢れ出した涙を止めることが出来ない。

先輩が顔を歪めたのが薄っすらと見えた。


「赤也…、ありがとう」


俺の頬を伝う涙を優しく拭って、先輩は俺の身体を抱き寄せた。

初めて、先輩の体温を感じた。

酷く胸を締め付けて、嗚咽が止まらない。


「…俺には、お前の気持ちが良く分からない…。けれど、俺は赤也を、大事な後輩だと思っている」


先輩の言葉が心にゆっくりと沁みこんでゆく。

俺の醜い感情さえも浄化するかのように。






この気持ちを上手く伝えられる術を持っていれば。

全て上手くいったのだろうか。


今はもう、知ることは出来ない。










004:くさりおちる、あい/テニプリ:切原×ジャッカル

ジャッカルたんお人よしにも程があるよ!!赤也は片思いが似合うと思う。
ブンジャ前提のアカジャ。なんて素敵なの。ジャッカルたんに言って欲しい言葉を無理矢理言わせました。

'06.05.02 執筆